一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

くれなずめ

私的評価★★★★★★★★☆☆

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映画『くれなずめ』公式サイトより引用

 (2021日本)

ある日突然、友人が死んだ。
僕らはそれを認めなかった。

泣きたいのに笑えて、笑いたいのに泣ける。“狭間”の時間に起こる奇跡─

 優柔不断だが心優しい吉尾(成田凌さん)、劇団を主宰する欽一(高良健吾さん)と役者の明石(若葉竜也さん)、既婚者となったソース(浜野謙太さん)、会社員で後輩気質の大成(藤原季節さん)、唯一地元に残ってネジ工場で働くネジ(目次立樹さん)、高校時代の帰宅部仲間がアラサーを迎えた今、久しぶりに友人の結婚式で再会した! 満を持して用意した余興はかつて文化祭で披露した赤フンダンス。赤いフンドシ一丁で踊る。恥ずかしい。でも新郎新婦のために一世一代のダンスを踊ってみせよう!!
 そして迎えた披露宴。…終わった…だだスベりで終わった。こんな気持ちのまま、二次会までは3時間。長い、長すぎる。そして誰からともなく、学生時代に思いをはせる。でも思い出すのは、しょーもないことばかり。
「それにしても吉尾、お前ほんとに変わってねーよな
   なんでそんなに変わらねーんだ?まいっか、どうでも。」
そう、僕らは認めなかった、ある日突然、友人が死んだことを─。

この物語は、結婚式の披露宴と
二次会の間に起こる短いお話。

 6人の“今”と、思い出が蘇る“過去”が交錯して笑いと寂しさがごちゃ混ぜになり、 やがて、目を背けていた “友の死”がそれぞれの人生に立ちはだかる―。 記憶にしがみつく、6人の男たちの痩せ我慢と一緒に、すべての出来事を見届けてください。

(映画『くれなずめ』公式サイト「Introduction & Story」より引用)

kurenazume.com


 なんか、演劇っぽいって思ったら、監督自身の実体験に基づく舞台劇を自ら映画化した作品だったんですね。

 ある日唐突に予期せぬ大切な友の訃報に接し、受け止めきれない現実から逃避してしまった5人の男たち。
 あのとき、あの言葉が最後だったなんて…消化し切れないままずるずると引きずってしまう感情。

 同級生の結婚披露宴という現在進行形から、それぞれの吉尾との、〝しょーもないけど愛おしい〟思い出のエピソードを織り交ぜながら、それぞれが割り切れない感情を抱き続けている理由を、観ている者に想像させるストーリー構成が秀逸だと思いました。 

 途中、もしや亡くなったのは吉尾だけじゃなく、6人全員亡くなってたんじゃないか、みたいな錯覚を覚えました。
 その辺のくだりは、かなりぶっ飛んだ演出なんだけど、そのパートがあるおかげで、ちゃんと心の始末をつけて、着地できたんだろうな、という印象。

 思い出を書き換えるのは、大切なことにちゃんと向き合って始末をつけることでもあるんだな。
 暮れなずむ景色が次第に蒼い夜に飲み込まれていくエンディングに、しんみり泣けました。


www.youtube.com


●監督・脚本:松居大悟 ●音楽:森優太 ●主題歌:ウルフルズ『ゾウはネズミ色』(Getting Better / Victor Entertainment)