ガス人間第1号
私的評価★★☆☆☆☆☆☆☆☆
(1960日本)
特撮…にジャンル分けするには異論のあるヲタクの方々もいましょうが、一般的な意味で特撮に分類しておきます。でもね、特撮である必然性が、ストーリーにないような気もする本作です。別にガス人間じゃなくても、普通の犯罪者でもイイじゃん、とか思っちゃいかんのだろうかね?
銀行強盗の正体は、ガス人間・水野(土屋嘉男さん)だった…ちゃんちゃん。
ではあんまりなので、もう少しストーリーを。水野が銀行強盗をして稼いだ金は、零落した美人の舞踊家元・春日藤千代(八千草薫さん)に貢がれていました。私財が殆ど破綻していながら、気高くも浮世離れした美しさで日夜舞踊の稽古に励む藤千代。彼女に密かに心を寄せ、再び舞台を踏ませるために銀行強盗で稼いだ金を蕩尽する水野。ふたりの恋は、かなり屈折しています。事件を追う刑事(三橋達也さん)と彼に恋心を寄せる女性記者(佐多契子さん)、ふたりの心弾むようなデート・シーンは、水野と藤千代の恋をより際立たせています。
芸に命を注ぎ込む藤千代の生き様は、恋をするには邪魔だったかも知れません。が、相手がガス人間じゃあねぇ…人間じゃないんですから。しかも、邪魔するヤツは次々と殺してしまうような怪物なんですから。怪物と美女の悲恋を語られてもねぇ…感情移入できません、ボクには。普通の犯罪者でも、ガス人間くらい十分に、屈折してませんかね?
ラストの劇場炎上のシーンが、切ないと感じる人には、高評価かも知れません。ボクは、「理不尽なモノを見せつけられて、どうしたらいいのか分からない」状態に陥ってしまいました。とても言葉で表せない、ムネの悪さを覚えました。陰気です。