一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

閉鎖病棟 -それぞれの朝-

私的評価★★★★★★★★☆☆

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閉鎖病棟 -それぞれの朝-』公式サイトより引用

 (2019日本)

 長野県のとある精神科病院
 死刑執行が失敗し生きながらえた秀丸笑福亭鶴瓶さん)。
 幻聴に苛まされるチュウさん(綾野 剛さん)。
 DVが原因で入院する由紀(小松菜奈さん)。
 三人は家族や世間から遠ざけられながらも心を通いあわせる。
 彼らの日常に影を落とす衝撃的な事件はなぜ起きたのか。
 それでも「今」を生きていく理由とは何か。
 法廷で明かされる真実が、こわれそうな人生を夜明けへと導く――。
(『閉鎖病棟 -それぞれの朝-』公式サイト「story」より引用)

www.heisabyoto.com


 さらに引き続き、auマンデイであります^ ^

 原作者の帚木蓬生さんは、精神科・心療内科の開業医だそうですから、閉鎖病棟の描写については、一定の事実に基づいていると考えて良いのでしょうね。
 冒頭から、看護師役の小林聡美さんが、扉という扉を外からも内からも鍵でいちいちロックして出入りする、その時の〝カチャッ〟という金属キー独特の無機質な音が耳について、心がざわざわします。
 ところが、案外病院敷地内を自由に行き来している様子も伺えますし、イチバン驚いたのが、普通に外出許可が出て、一人で出歩いているという自由さです。ちょっと閉鎖病棟の意味がよく分らなくなりました。

 ま、それはさておき、入院患者たちはそれぞれに独自の症状を持っていて、いろいろなこだわりがあったり、さまざまな忌避すべきものがあったり、ただ、何かしら強烈に心を刺激するものに触れてしまうと、連鎖的に病状を発露させてカオスな状態になってしまうことがあるらしい、というような描写があります。落ち着いた日常では、一体どういった症状で困っている人なのか、さっぱり分らない方もいくばくかいらっしゃいましたし、綾野剛さん演じる塚本中弥(チュウさん)なんかも、発作を起こさない限り、社会生活ができないワケではなさそうに思えます。あれ? 午前中に見た『ブラック校則』にも髙橋海人さん演じる〝月岡中弥〟が登場してましたね。〝中弥〟って名前、流行ってます? 不思議な一致だなぁ。

 また話が逸れました。

 ともかく、閉鎖病棟の日常をはじめ、入院患者のチュウさん、秀丸、由紀の持つそれぞれの事情が丁寧に紡がれてゆき、ストーリーは次第に重厚なイメージを膨らませながら、ある衝撃的な事件へと向かってゆきます。
 いろいろ感じることはあるんですけど、けっこう痛々しい過去の出来事が、生々しく描かれて、しんどいところもありました。
 それでも、まぁ、決して重たいだけじゃない、最後に秀丸の背中が映し出されたまま……その途中で映像がブラックアウトし、深い余韻を心に残しながら終わる、そんな、かすかな希望の見える終わり方が、とても良かったと思います。
 ただ、全体的に丁寧に、丁寧に人物描写・状況描写を積み重ねていたのに、法廷の場面で由紀が語った内容は、ちょっと性急過ぎた気がしてなりません。本来なら、そんなにまとめて語れるような軽々しいことではありませんし、もう少し時間をとって、場合によっては公判の回を変えてでも、丁寧に状況や心情を語ってほしかった気がしました。彼女の語った内容だけでは、あまりに感情優先過ぎて、裁判の証言にはなりえません。そこが、少しもったいなかったな、と感じたのは、ボクの感性なので、ご容赦を。


※平山監督の作品。
vgaia.hatenadiary.org
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●監督・脚本:平山秀幸 ●原作:帚木蓬生(小説『閉鎖病棟 Closed Ward』/新潮社刊)