大停電の夜に
私的評価★★★★★★★★★★
(2005日本)
この街が突然大停電になったら…
その時あなたは誰と一緒にいたいですか?
光が消えた夜だから、本当の想いを伝えたい。
クリスマスイブ、最も輝く聖なる夜に、東京が突然大停電になった。
様々な想いを抱える12人の男女が真っ暗な中で見つける<本当の愛>とは?
かつての恋人を待ちつづけるバーのマスター。/豊川悦司さん
妻と恋人の間で揺れる会社員。/田口トモロヲさん
「ある迷い」に悩む主婦。/原田知世さん
想いを遂げようとする出所したての男。/吉川晃司さん
過去を捨て新しい結婚に幸福を求めた妊婦。/寺島しのぶさん
未来のない関係に「さよなら」をするOL。/井川遥さん
遠い上海の恋人に想いを馳せる中国人研修生。/阿部力さん
初めての恋のときめきに戸惑う少年。/本郷奏多さん
病気を患い希望を見失っている人気モデル。/香椎由宇さん
ある秘密を抱える老婦人。/淡島千景さん
妻の〝告白〟に動揺する夫。/宇津井健さん
街行く人の幸せを願うキャンドル・ショップの女店主。/田畑智子さん
すべての光が消えた時、かつてない奇跡の夜がはじまる。
(DVDパッケージから引用)
素直になるには、ボクたちの周りには余計なものが多すぎる。
その余計なものを取り外すために繰り出されたのが、〝東京大停電の夜〟という壮大なギミック。
まぁ、最初とんとんとんと12人の人間模様が小出しにされて、途中でワケが分からなくなって置いてかれないかと心配したんですが、何のこたぁない。一見無関係と思える12人の人生を、たった一晩で見事にクロスさせながら、実に巧みにストーリーを紡いでいく脚本・演出、実に素晴らしい仕事ぶりでした。しかも、そのクロスの仕方が絶妙の塩梅で、適度に波風を立てて見せるけれど、決して荒れることはない。本当に素晴らしい。
そして、いろんな人生が、それぞれの運命に向き合い、互いの命を慈しみ、愛おしみながら、それぞれちゃんと落ち着くべき場所に落ち着いていく大団円。胸がほっこりと温かくなり、幸せいっぱいな気持ちにさせてくれました。
個人的には、アメ車を使ってストーリーを転回させるシナリオの妙、それと対比するかのように自転車で二人乗りして停電の街を駆け抜ける若い二人のくだりが好きです。
天文台から見上げる東京の夜空に浮かぶ冬の星々、それを見ながら人工衛星愛をアツく語る少年と、耳を傾ける女性。心に沁みるエピソードです。
そして、保育園にやって来るサンタクロースのくだりには、分かっていても、思わず大泣きさせられました。
で、最後はやはり、バーのマスターとキャンドル・ショップの女店主との掛け合い。田畑さんが豊川さんに寄せる想いがいっぱい溢れていて、なんだかとっても可愛かったです。
それにしても、停電した路地裏とジャズ・バーを彩るキャンドルの灯り、本当に美しい画でした。
なんだろなぁ。いろいろ辛いこととかあるけど、人生捨てたモンじゃないと、心から思える、ステキな映画です。『クリスマス・クリスマス』とともに、今さらながら、毎年定番で見ることになりそう。