Bittersand
私的評価★★★★★★★★☆☆
(2021日本)
クラスの相関図に隠された秘密──
7年前の真実に迫る“青春ミステリー”
吉原暁人(井上祐貴さん)25才、さえない日々を送るサラリーマン。
ある日、高校時代に想いを寄せていた石川絵莉子(木下彩音さん)と、思いがけない再会を果たす。しかし彼女にとって、暁人を含めたその頃の思い出はすべて、忌まわしい“黒板事件”によって、拒絶すべき過去となっていた。そして暁人も、その頃から自分が一歩も前に進めていないことに気付く。
悪友井葉(萩原利久さん)の力を借り、暁人は自分のため、そして絵莉子のために、「記憶を塗り替える」企てを進めるが…。
(映画『Bittersand』オフィシャルサイト「Story」より引用)
忌まわしい過去は、歳を重ねても、なかなか記憶の片隅から消えてくれない。
むしろ、何かきっかけがあれば、ついつい思い起こしてしまう、厄介なモノだ。
ボクは、小中学校時代の同窓会には顔を出したくない人だ。
できれば、同窓生とは誰とも顔を合わせないで済むなら、一生それでイイと思っている人だ。
(まぁ、そもそも招待状すら送ってもらえてない事実はあるけどね^^;)
だが、微妙に当時と近い場所に住んでいると、たまさか出会ってしまうことも、ままあるワケで。
そんな時、相手は何気に悪意のない懐かしみだけを押し付けて来て、屈託なく話しかけてくるんだけれど、こっちは内心穏やかではいられない。当時の同級生たちは、誰も信じられなかったからだ。
きっぱりと、この映画のように、解決できる事件があれば、過去の記憶を塗り替えるチャンスはあったかも知れない。
だが、現実は、しばしばビターなだけだ。
きっとボクは、ビターな記憶に囚われたまま、この先も過ごしていくだけだろう。
あだしごとはさておき。
若干強引さを感じるところもあるけど、学生時代にハマってた小峰元さんの青春ミステリのような、ユーモアとほろ苦さを湛えた作品だった。
全体的な雰囲気、7年前の記憶と現在とを行き来するストーリーの流れも分かりやすく整理されていて、安心してのめり込めた。
とは言え、同窓会で7年前の黒板事件の真相を暴く過程は、決してキモチの良いモノではなかった。やはり、そもそも7年前に事件が起きなければ、だれもイヤな思いを引きずらずに済んだと思うワケで。
でも、キレイ事だけじゃ、な。
過去に決着をつけなきゃ前に進めないヤツがいたワケだから。
うん、最後は〝ビターのちハッピー〟で、イイのかな?
最後に絵莉子は、「なんでそんなに簡単に気持ちを翻したのか?」って思ったんだけど、エンドロールの先に、答えがあった。
でも、アレ、蛇足?
当時は、「余計なことしやがって、面倒くさくなっただけじゃねーか」みたいな感情だったのかしら?
人のキモチに鈍感なオッサンには、ナゾ、だな。
※主題歌が良かった。
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●監督・脚本:杉岡知哉 ●主題歌:add『ニヒルな月』
夏への扉―キミのいる未来へ―
私的評価★★★★★★★☆☆☆
(2021日本)
1995年の僕と2025年の僕で、君を救え!
30年の時を超えて、未来を変える扉を探す──
将来を期待される科学者の高倉宗一郎(山﨑賢人さん)は、亡き養父である松下(橋爪淳さん)の会社で研究に没頭していた。
早くに両親を亡くしずっと孤独だった宗一郎は、自分を慕ってくれる松下の娘・璃子(清原果耶さん)と愛猫ピートを、家族のように大事に思っていた。
しかし、研究の完成を目前に控えながら、宗一郎は罠にはめられ、冷凍睡眠させられてしまう。
目を覚ますと、そこは30年後の2025年の東京、宗一郎は研究も財産も失い、璃子は謎の死を遂げていた──
失って初めて、璃子が自分にとってかけがえのない存在だったと気づく宗一郎。
人間にそっくりなロボット(藤木直人さん)の力を借り、30年の間に起こったことを調べ始めた宗一郎は、ある物理学者にたどり着く。
驚きの事実を知った宗一郎は、再び1995年へと時を超える。
ただ、璃子を救うために──
彼女は言ってくれたんだ。
「あきらめなければ、失敗じゃないでしょ」と──
(映画『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』オフィシャルサイト「Story」より引用)
大学生の頃、サークルの友人と先輩が本の感想をダベってる時に、あまり興味無さげに居合せてたボクが小耳に挟んだ作品に、タッド・ウィリアムズ作〝テイルチェイサーの歌〟とロバート・A・ハインライン作〝夏への扉〟があった。いずれも海外のファンタジーSF作品で、ネコが登場する。
幾ばくかの年月を経て、たまたま両作品ともハヤカワ文庫で入手したのだが、読まないまま、引っ越しのドサクサ紛れに、どこかに行ってしまった。
だから、原作は未読だけど、ザックリとしたあらすじだけは聞きかじっていたので、映画館でチラシを手にした時から随分と楽しみに待っていたのだ。
配役では、夏菜さんの演技が良かった。
ヒールは画面に溢れる胸くそ悪さで、役者自身までイヤな奴と思わせてくれなくっちゃ、本気でのめり込めないモノ。ただ、登場した時から、悪役臭さプンプンさせてたのは、どうなんだろう? 監督の演出の内なのかな?
清原果耶さんは、ストーリー上、後半はほとんど出番がなかったのが残念だったけど、本作でも表情で見せてくれてて良かったと思う。
ストーリーは…う~む。甘ったるいファンタジーとしか言えない。
30年後に判明する悪役の未来が…正直、もっともっと、これでもか、これでもかと散々な目に遭わされ続けるのかと思いきや、冷凍睡眠から覚めたあとに分かるのは、璃子の死のみ。まぁ、これ以上ない仕打ちではあるけれど、無理やり冷凍睡眠させられるくだりを見ていれば、ある程度予想がつく展開だし、むしろ璃子が裏切り者になってる未来の方が、宗一郎にとっては堪える仕打ちだとまで思ったんだが、それだと、あまりにも昼メロ的ドロドロ展開過ぎて、作風に合わないというモノだったんだろうな。
これは、純な男女の甘ったるいファンタジー&ロマンスだから。
その上で、2025年。
ここからの展開、なんということか…宗一郎にとって〝イイ人〟しか登場しない。
ある意味、もうさまざまな障害が取り除かれたかのような状態で、あとは時空を飛び越えるだけ、みたいな展開…とても甘々な御都合主義全開のSFファンタジーだと思ってしまった。ここでも、ホントは冷凍睡眠の間に、誰かが裏切って思わぬ未来が…ってなって、何度もタイムリープを繰り返す羽目になるんじゃないかと期待したんだが…それじゃあ〝Back to the Future〟シリーズなんだよな。
本作は、もっとストレートで純なイメージ。純な男女の甘ったるいファンタジー&ロマンスだから(くどい^^;)
とは言え、分かっていても、予定調和な大団円には、ほろりと泣けてしまった。
総じて演出、登場人物の演技が良かったということで、たぶん、Blu-ray出たら買ってしまうヤツだと思う。こういう作品、好きなんだよ^^;
感動的なエンディングになだれこむ展開の中、唐突に流れ始めたLISAさんの耳に刺さるハイトーン・ヴォイスは、ちょっとこの作品の雰囲気に合ってないと感じた。さらに、楽曲が歪み気味で不快でさえあったのは残念だった。
作品全体の流れからすれば、個人的にはMr.Childrenの桜井和寿さんの歌声でエンディングを迎えたかったと思った。
あと、設定的に1995年の科学が進みすぎてた。
テレビだとかコンピュータだとかは、時代を感じさせるシロモノが登場するのに、今でも実用化されてないような、あるいは今頃本格的に実用化され始めたような科学技術が、ほぼ出来上がっているかのような印象。実際、この話を解決に導く画期的な装置は、寡聞にして未だどこかで実用化されたとは聞かないけれど、たぶんこの時代に完成している。
一方の2025年の未来が、さほど〝未来〟という感じがなかった。4年前に当たる現在の2021年と、ほぼ一緒?と思えた。
まぁ、半永久的に動く人型ロボットは、まだ実用化されてないけどね。
ただ、宗一郎がスマホを渡されて戸惑うくだりは、面白かった。
「いきなりこんなことになってて、ワケ分かんないですよ」状態だったね^^
そういえば、猫のピートは、もっと魅力的に描ける余地あったんじゃないかな?
演出の都合で、夏への扉を探してドアを次々と開けるのが精一杯だったんだろうか?
少なくとも、猫の映画ではない…と思うけど。
●監督:三木孝浩 ●脚本:菅野友恵 ●音楽:林ゆうき ●主題歌:LiSA『サプライズ』(SACRA MUSIC) ●原作:ロバート・A・ハインライン(作)/福島正実(訳)(小説『夏への扉』/ハヤカワ文庫刊)
ヒノマルソウル ~舞台裏の英雄たち~
私的評価★★★★★★★☆☆☆
(2021日本)
誰もが知るあの栄光の裏には、
誰も知らない25人のテストジャンパーたちが起こした、
奇跡があった──。
長野オリンピック・ラージヒル団体で日本初の金メダルを狙うスキージャンプチーム。そこに、エース原田(濱津隆之さん)のジャンプを複雑な想いで見つめる男─元日本代表・西方仁也(田中圭さん)がいた。前回大会・リレハンメルオリンピックで、西方は原田とともに代表選手として出場するも、結果は銀メダル。4年後の雪辱を誓い練習に打ち込んだが、代表を落選。失意の中、テストジャンパーとしてオリンピックへの参加を依頼され、屈辱を感じながらも裏方に甘んじる。そして迎えた本番。団体戦の1本目のジャンプで、日本はまさかの4位に後退。しかも猛吹雪により競技が中断。メダルの可能性が消えかけた時、審判員たちから提示されたのは、「テストジャンパー25人全員が無事に飛べたら競技を再開する」という前代未聞の条件だった…。
命の危険も伴う悪天候の中、金メダルへのかすかな希望は西方たち25人のテストジャンパーに託された──。
この隠された真実に、あなたはきっと、涙する──
(映画『ヒノマルソウル ~舞台裏の英雄たち~』公式サイト「Story」より引用)
1998年──もう20年以上経つんだなぁ…。
実話、それも選手は実名で登場、長野オリンピック開催当時の記憶が蘇ります。
そして1994年のリレハンメル・オリンピック、最後に原田雅彦さんが卒なく飛躍し終えれば団体金メダル確実という状況でよもやの失速、夜中にテレビの前で呆然とへたり込んだ記憶までセットで蘇りました。
リレハンメルで団体銀メダルのメンバーだった西方仁也さんが、長野オリンピックに出場していなかったのは知っていましたが、テストジャンパーをしていたことは知りませんでした。というか、テストジャンパーの仕事の重要性についても知りませんでしたし、吹雪で中断していた団体ジャンプ競技の裏で、こんなことがあったことも全く知りませんでした。
そして、金メダルが決まった後のインタビューで原田雅彦さんが「俺じゃないよ。みんなだよ」と言った言葉の本当の意味を、この映画で知ったのです。
まぁ、仕方ないです。
実話の持つ力には、泣かされっ放しになるしかありません。
実際の西方さんの気持ちがどこまで再現されているのかは知りませんが、けっこう最後の最後…団体競技が中断したまま終了するかどうかの土壇場まで、リレハンメルで金メダルを取れなかったことや、長野で五輪メンバーに選出されなかったこと、原田さんに対する嫉妬のような複雑な感情…etc.を引きずってたんだなぁ…と。行き場のない感情…生々しくってドキュメンタリーのようなリアルさを感じました。
そしてこの映画のリアルさを、より一層際立たせている要素が、ジャンプのシーンですね。
公式サイトの監督さんのコメントにありましたが、ジャンプ競技は10歳までに始めないと、恐怖心を克服できないそうなんですね。そのため、他の競技の映画と違って、役者さん自身がスタント無しに競技シーンを演じることは無理とのこと。そこで、ジャンプ台のスタート地点と着地点の映像のみ役者さんに演じてもらったそうなんですが、説明が無ければ気づかないほどトータルでリアルにジャンプ競技の映像が再現されていました。素晴らしい仕事です。
今、東京オリンピック開催に、いろんな意見や感情が渦巻いているところではありますが、頂点を極めることに人生を賭けている人たちのことは、そんな経験を持ち合わせないボクらには到底分かり得ないものです。ボクの記憶の中でも1980年のモスクワ五輪や1984年のロス五輪のボイコットによって、深く傷ついた世界中の競技者の人たちが大勢いらっしゃいました。さまざまな競技を行っている人たちにとって、東京オリンピックは、大切な舞台なのは間違いありません。もちろん、人命軽視はもっての外ですけれど、開催まで1か月を切った現在、何が正解か、誰も責任をもって答えられないところまで来ていると思います。やるならやるで、腹を括ってやりきるしかないのでしょう。
地方住まいのボクには直接関わることはないのですが、困難な状況の中、日本でオリンピックが行われることを決して他人事と思わず、さまざまな人たちに思いを寄せ、せめて自分自身の暮らしの中では、責任ある行動をしたいと思います。
※予告編でも泣いた…;;
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●監督:飯塚健 ●脚本:杉原憲明、鈴木謙一 ●音楽:海田庄吾 ●主題歌:MISIA『想いはらはらと』(Sony Music Labels)
しあわせのマスカット
私的評価★★★★★★☆☆☆☆
(2021日本)
人を笑顔にするために、私は夢に進む。
岡山を舞台に果実和菓子に出会った少女が奮闘する感動のドラマ
北海道から岡山に修学旅行で来ていた女子高生の相馬春奈(福本莉子さん)は、岡山の名産であるマスカット・オブ・アレキサンドリアを病床のおばあちゃんのお土産にしようとしていたが、財布を落としてしまう。手元に残っていたお金で買える金額ではなく、諦めかけた時に目に入ったのが、そのマスカットを使った果実和菓子「陸乃宝珠」だった。たった一つだったが、その和菓子をお土産に買って病床のおばあちゃんを喜ばせたことをきっかけに、春奈はこの和菓子を作った会社に就職しようと考える。だが、面接に遅刻してしまい不合格になるものの、社長の田岡(長谷川初範さん)の一存で入社することになった。
自分がデザインした和菓子を作ることを目標にしていた春奈だったが、配属されたのは会社と提携しているぶどう農園だった。園主の秋吉伸介(竹中直人さん)は仕事に厳しく頑固で、手伝いに来た春奈を冷たくあしらうが、彼女はそれにもめげず認められようと頑張り、次第に距離が縮まっていく。そんな中、伸介の妻よし(土屋裕子さん)から、10年前に事故で亡くなった息子のマスカット園を守り続けていたが、それを整理した上でマスカットの生産をやめることを聞く。
近所に住む若手農家の屋敷達也(中河内雅貴さん)と知り合った春奈は、そのビニールハウスを教えてもらい、なんとか存続させることを伸介に話すが、拒否された上に明日からこないように宣言されてしまう。
落ち込んだ春奈は、彼女に会いにやって来た姉の雪絵(本仮屋ユイカさん)からも察せられ、実家に帰って来るように言われ、退職を決意する。
そんな中、西日本豪雨による未曾有の大水害が起こった・・・
(映画『しあわせのマスカット』公式サイト「Story」より引用)
岡山県に住んでてもマスカット・オブ・アレキサンドリアは、「一生のうちに一回食べたかな?」くらいの記憶しかないシロモノ。
高級贈答品のイメージだし、そもそもスーパーに並ぶことがないワケで、自分の生きざまに限りなくクロスしない食いモノだ。
そんなマスカットを栽培する農家に派遣された、和菓子屋の新人社員・春奈が奮闘する物語。
マスカット農家のワケありオヤジ・秋吉伸介役を竹中直人さんが演じている。
けっこう竹中さん、こういう役どころで、時折余計な力が入ってイキリ気味になる印象だったのだけど、今回はなかなか抑えが効いてて、渋い演技に徹していた。すごく良かった。
あと、正直言って、竹中さんの岡山弁が、「まぁギリ合格ラインかな?」って思ったくらい、他の出演者の岡山弁が、土地の雰囲気を出し切れてなかったと感じた。
主演の福本莉子さんは、まだまだかなぁって思ったなぁ。
卒なく演じてるけど、まだ彼女なりの個性=輝きを放つまでに至ってない印象。
声に、ひ弱さを感じるところが、けっこう損してる気がする。
『映像研には手を出すな!』では、ちょっとヤンキー入った役どころで、けっこう声張り上げてたけどねぇ。
あと、脚本のせいか演出のせいか、相馬春奈のキャラが、イマイチ受け入れにくかったのが残念。
あまりにも、自分の思いが走り過ぎてて、周りが見えてなさ過ぎてて、無自覚な自己チュー過ぎてて、「そんな人、実際居てるんかしら?」って思った。
イチバン気になったのが、太郎のブドウ農園に行くのに、若手農家の屋敷達也の軽トラに乗っていくことになったくだりの、春奈の反応。なんなんだろう? 自己チュー過ぎて、お礼の言葉もなければ、乗せていくのが当然みたいに薄い反応で助手席に乗ってしまう。このあと、秋吉に手伝いを許されて、同じく軽トラに乗るよう促されたときも、そうなるのが当然みたいに思ってたんじゃないかと思わされるくらい、シレッとした薄い反応で乗り込む。何日も通ってつっけんどんに追い返されてたのに、そういうときって、ひとまず喜んだり、感謝を伝えたりせんもんかねぇ?
でも、そんなちょっと無礼とも思えるような部分も含めて、同期女子曰くの〝オオモノ〟ちゃんなのかも知れない。
確かに物怖じせず、ド厚かましく他者にアプローチしていく根性は、大したものだ。大したものだとは思うけど、喋ってる事柄が、とことん自分本位の考えをお披露目してる痛さに気づけない青さもあって、見ていて冷や冷やする。
最終的に周囲を巻き込み、動かすことになったのは、若さゆえのひた向きさの成せる技か?
だけど、故人の気配を感じる、みたいなオカルトっぽい展開は、御免蒙りたいにゃ^^;
最後に。
平成三十年豪雨から約3年。
災害復興を描くのが目的の映画ではないとは言え、災害に触れるんだったら、もうちょっと丁寧に踏み込んだ描き方してほしかったかなぁ。
上空からの衝撃的な映像だけ、不意に見せられたのは、辛かった。
水が引いたあとも、あの夏は連日ドピーカンの猛暑日続きで、被災地の片づけ作業は、炎天下に全身焼き付けられながら、カラッカラに乾いた土砂・ガレキが粉塵になって舞い上がって、臭いし息も苦しいし目も痛いし…いつ終わるとも知れない作業をコツコツこなしていくしかない、ひたすら辛抱我慢の日々だったワケで、そんな日々に苦しめられた、あの恨みがましい太陽の光と熱を、農園の片づけ作業のときに全く感じられなかったところに、なんか嘘臭さを感じてしまったのが、どうにもやるせなかった。
まだ、被災地は復興半ば。生活基盤が不安定なままの人たちもいらっしゃるし、被災地域の方々は、この映画を観たとき、どんな思いを抱くんだろう。
主人公のキャラのように、前向きになれるのならイイのだけれど。
※残念だけど、予告編の方が、出来がイイ^^;かも…
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くれなずめ
私的評価★★★★★★★★☆☆
(2021日本)
ある日突然、友人が死んだ。
僕らはそれを認めなかった。
泣きたいのに笑えて、笑いたいのに泣ける。“狭間”の時間に起こる奇跡─
優柔不断だが心優しい吉尾(成田凌さん)、劇団を主宰する欽一(高良健吾さん)と役者の明石(若葉竜也さん)、既婚者となったソース(浜野謙太さん)、会社員で後輩気質の大成(藤原季節さん)、唯一地元に残ってネジ工場で働くネジ(目次立樹さん)、高校時代の帰宅部仲間がアラサーを迎えた今、久しぶりに友人の結婚式で再会した! 満を持して用意した余興はかつて文化祭で披露した赤フンダンス。赤いフンドシ一丁で踊る。恥ずかしい。でも新郎新婦のために一世一代のダンスを踊ってみせよう!!
そして迎えた披露宴。…終わった…だだスベりで終わった。こんな気持ちのまま、二次会までは3時間。長い、長すぎる。そして誰からともなく、学生時代に思いをはせる。でも思い出すのは、しょーもないことばかり。
「それにしても吉尾、お前ほんとに変わってねーよな
なんでそんなに変わらねーんだ?まいっか、どうでも。」
そう、僕らは認めなかった、ある日突然、友人が死んだことを─。
この物語は、結婚式の披露宴と
二次会の間に起こる短いお話。
6人の“今”と、思い出が蘇る“過去”が交錯して笑いと寂しさがごちゃ混ぜになり、 やがて、目を背けていた “友の死”がそれぞれの人生に立ちはだかる―。 記憶にしがみつく、6人の男たちの痩せ我慢と一緒に、すべての出来事を見届けてください。
(映画『くれなずめ』公式サイト「Introduction & Story」より引用)
kurenazume.com
なんか、演劇っぽいって思ったら、監督自身の実体験に基づく舞台劇を自ら映画化した作品だったんですね。
ある日唐突に予期せぬ大切な友の訃報に接し、受け止めきれない現実から逃避してしまった5人の男たち。
あのとき、あの言葉が最後だったなんて…消化し切れないままずるずると引きずってしまう感情。
同級生の結婚披露宴という現在進行形から、それぞれの吉尾との、〝しょーもないけど愛おしい〟思い出のエピソードを織り交ぜながら、それぞれが割り切れない感情を抱き続けている理由を、観ている者に想像させるストーリー構成が秀逸だと思いました。
途中、もしや亡くなったのは吉尾だけじゃなく、6人全員亡くなってたんじゃないか、みたいな錯覚を覚えました。
その辺のくだりは、かなりぶっ飛んだ演出なんだけど、そのパートがあるおかげで、ちゃんと心の始末をつけて、着地できたんだろうな、という印象。
思い出を書き換えるのは、大切なことにちゃんと向き合って始末をつけることでもあるんだな。
暮れなずむ景色が次第に蒼い夜に飲み込まれていくエンディングに、しんみり泣けました。
●監督・脚本:松居大悟 ●音楽:森優太 ●主題歌:ウルフルズ『ゾウはネズミ色』(Getting Better / Victor Entertainment)
任侠学園
私的評価★★★★★☆☆☆☆☆
(2019日本)
義理と人情を重んじる組長に振り回され、経営不振に陥った私立高校の立て直しを命じられたヤクザたちの騒動を描く。今野敏の人気小説を西島秀俊、西田敏行W主演で映画化。
困っている人は見過ごせない義理と人情に厚すぎるヤクザ“阿岐本組”。社会貢献に目がない組長(西田敏行さん)は後先考えずに厄介事を引き受けてしまい、ナンバー2の日村(西島秀俊さん)は振り回されてばかり。そして今回、日村が組長に命じられたのは、経営不振に陥った私立高校の立て直し。学校には嫌な思い出しかない日村は気が進まずも理事として学校に乗り込むが、そこにいたのは無気力・無関心のイマドキ高校生と、事なかれ主義の教師たちだった。
(WOWOWの番組内容から引用)
社会貢献好きなヤクザの組長が次から次へと厄介事を引き受けてしまい、その都度人助けに奔走するはめになる子分たちの困惑と騒動を描いた人気小説「任侠」シリーズの第2作を映画化した人情コメディ。昔気質の組長役をベテランの西田が、切れ者だが組長に振り回されてしまうナンバー2役を西島が好演した。自身は勉強嫌いで中学までしか出ていなかったナンバー2が理事として学校に乗り込み、無気力な生徒たちや事なかれ主義の教師に活を入れていくさまが痛快だ。共演は伊藤淳史、葵わかな、葉山奨之など。
(WOWOWの公式サイトから引用)
まぁ…ありがちっちゃありがちだし、予想も超えないし、サプライズもない代わりに、安心して笑える安定の任侠モノ人情コメディかな? とは言いつつ、どっちかと言うと、シリアスに寄せてるところも感じるので、ドラマ部分はしっかりしてるんでしょう。
クライマックスでの西田親分の啖呵は圧巻。さすがの大ベテラン。これは一見の価値あり。
若手では、葵わかなさん、葉山奨之さん、好きな俳優さんが出演されてたんだけど、イチバン「おっ!」と思ったのが、桜井日奈子さんの暴走(?)だったよね。なかなかイイ感じに頭に血が上ってまってます。彼女、演技上手くなってる? だとイイな。
※こっちのセンセイの大仰な啖呵は、歌舞伎の大見得を切るさまのようで、あからさまにコメディに寄せてるカンジ。まぁ、振り切ってて、爽快ですらありますが^^;
vgaia.hatenadiary.org
咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A
私的評価★★★★★★★☆☆☆
(2018日本)
麻雀に打ち込む女子高校生たちの青春ストーリー第2弾。奈良県代表の阿知賀女子学院麻雀部が強豪相手に戦いを挑む。桜田ひよりをメインに、フレッシュな若手女優が共演。
阿知賀女子学院麻雀部が全国高校麻雀大会の奈良県予選を突破し、全国大会に駒を進めた。1年生で大将の穏乃(桜田ひよりさん)は小学生時代をともに過ごし、現在は長野県の清澄高校麻雀部所属の幼なじみ・和(浅川梨奈さん)ともう一度対局したいという気持ちで大会に臨む。だが、穏乃たちの前には大阪代表の千里山女子高校、福岡代表の新道寺女子高校、高校ナンバーワンと称される清澄高校の宮永咲の姉・照(浜辺美波さん)を擁する東京代表の白糸台高校などの強豪校が立ちはだかる。
(WOWOWの番組内容から引用)
小林立の青春麻雀コミックをもとにした実写映画版第2弾。前作と同様、TVドラマ全4話と特別編を挟んでの劇場版となる。今回はコミック版の同名外伝を原作に、全国高校麻雀大会準決勝を主な舞台として描く。桜田をはじめ、伊藤萌々香、恒松祐里、渡邉幸愛、私立恵比寿中学の中山莉子ほか、新進の若手女優たちが登場し、彼女たちが魅せる麻雀場面はそれぞれのバックグラウンドを交えて手に汗握る展開を見せる。また、前作で主役の咲を演じた浜辺美波が今回はその姉・照を演じ、違うキャラクターで存在感を発揮した。
(WOWOWの公式サイトから引用)
えっと…前作観て、多少ストーリーの枠組みは分かってたので、まぁ、アレだ。いろいろとツッコミどころ満載だけど、そこは置いとこ。
相変わらず麻雀卓囲んで、麻雀じゃない競技やってるようにしか見えない(みんなエスパーだよな^^;)けど、前作よりは、展開がスリリングに感じられたのは良かった。
で、まぁ何より、イロモノっぽい役じゃない桜田ひよりさんが観られた(しかも初主演!)のが、イチバンかな。彼女は、かわいい。一度見たら、めっちゃ気になる顔立ちだと、個人的に思ってる。
恒松祐里さんも可愛かったし、悪いけど可愛い女子が勢ぞろいしてキュンキュンしてるの見たさで、このシリーズ観る人たちが一定数いるとしたら、それはそれで、仕方ないよな。
あと、阿知賀女子学院麻雀部のメンバーが歌うエンディング・テーマの〝春~spring〜〟が、めっちゃアイドル曲だったの、良かったなぁ。
メンバーは、桜田さん、恒松さんのほか、伊藤萌々香さん(フェアリーズ)、渡邉幸愛さん(SUPER☆GiRLS)、中山莉子さん(私立恵比寿中学)と、アイドル・グループの子が揃ってたのね。納得の出来だな。
元歌は1999年リリースのHysteric Blueの曲。もう20年以上前の曲かぁ…当時、カーMDに入ってた。懐かしい。
で、振り返って最初から見直してみると、オープニング主題歌の〝笑顔ノ花〟も同じメンバーで歌ってて、こちらも春らしくてキュンキュン来るアイドル曲だったワケで、なんだかんだで、意外とハマってしまう中毒性のある作品だと思ったよ。
●監督:小沼雄一 ●脚本:森ハヤシ ●音楽:T$UYO$HI(The BONEZ) ●原作:小林立(コミック『咲-Saki-』/スクウェア・エニックス「ヤングガンガン」掲載)