一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

五日市物語

私的評価★★★★★★★★☆☆

五日市物語 [DVD]

 (2011日本)

あきる野市を訪れた取材記者の友里。
人々の出逢いによって、彼女の心が変わりはじめる…。

 テレビ番組等を製作するにあたっての情報収集を専門に行っている会社「あつめ屋」に勤める伊藤友里遠藤久美子さん)。テレビ局からの依頼で、平成の大合併の先駆的合併を行った東京都あきる野市へ赴き、合併から15年経った今、歴史的にも古くから栄え風光明媚だった当時の五日市がどう変わったのかを探り始める。
 しぶしぶ取材を始めた友里であったが、市職員の栗原雄介(山﨑佳之さん)に導かれて、時が止まったかのような穏やかな空気が流れる土地柄に触れてゆくうちに、心が洗われていくような感情を覚えるのであった。
 そして、昔からずっと五日市に暮らしている油屋旅館の女主人・岸トシ子(草村礼子さん)と出逢い、彼女の生き様に興味を抱くようになり、次第に友里の中でも何かが変わり始める……。
(DVDパッケージより引用)



 カメラ持って溌剌と取材に出歩く遠藤久美子さんを見て、『ウルトラQ~dark fantasy~』シリーズの楠木涼を思い出しました。

 あきる野市市制15周年記念事業で制作された映画だそうで、同市職員の小林仁さんが脚本を手がけ自ら監督した作品なんだそうです。
 なんか以前もナントカ市市制ン周年記念事業の映画を観た気がしますが、そのときの微妙な印象が邪魔をして、ちょっとばかし余計な予断を抱いてしまい、ついつい構えて観てしまいました。
 しかし、観始めてすぐ、それは余計な心配と悟りました。
 花火時計のくだりとか、若干あざとい仕込みを感じるところはありましたが、全体的には、意外と言っては失礼ですが、登場人物の思いや気持ちが丁寧に描かれた、しっかりしたストーリーでした。

 自然豊かな五日市の風景は、非常に美しく撮れており、そこに暮らす人々の居住まいとともに、とてもステキな町でした。
 幕末から明治初期に〝五日市憲法草案〟を起こした千葉卓三郎のことを、中学生の夏休みの自由研究の課題として取り組ませたり、看護師として国内外で活躍し、世界初のナイチンゲール記章を受けた萩原タケのことを、地元の劇団の演劇という切り口で紹介したり、ちゃんとストーリーに馴染むように取り上げていたのも、好印象でした。

 CGで再現したような昭和2年の材木運搬の様子。
 背の高い木々の生い茂る谷沿いに、丸太を組んで敷設した上りの坂道の上を、一人の男が大八車に積んだ丸太を引いて歩いているんですが、同録のメイキングを見ると、丸々実写なんですね。
 完成したシーンはわずかなカットなのに、先に進むにつれて丸太の坂道を組み直しながら、都合4回も撮影を繰り返したそうです。
 まさに人の手が作った映画の情熱のアツさを感じました。


 『うん、何?』を観たときも思いましたが、日本には、美しくやさしい〝心のふるさと〟と呼べるような町が、まだまだいっぱいありますね。
 生涯出向くことは叶わずとも、こうして映画として見せていただくことで、その町に行った気持ちにさせてくれます。
 こうした体験も、映画の醍醐味ですね。



Wikipediaによると、監督の小林さんは、中学2年の時に見た斎藤耕一の「約束」(1972年)に感激し、映画監督を志したそうです。どうでもイイんですが、誕生日がボクと一緒だwww
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●監督・脚本:小林 仁(『風の見える街』)