一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

僕と妻の1778の物語

私的評価★★★★★★★★★☆

僕と妻の1778の物語 コレクターズ・エディションBlu-ray

 (2011日本)

 夢見がちで売れないSFばかりを書き続けている作家の朔太郎(草彅剛さん)。つつましいながらも、高校時代からのつきあいである愛妻・節子(竹内結子さん)と幸せな日々を過ごしていた。だが、あるとき節子が重いガンを患っていることが判明、朔太郎は医師(大杉漣さん)から妻の余命が1年だと宣告されてしまう。残された時間で自分に何ができるかと悩んだ朔太郎は、やがて妻を笑顔にするために、1日1編のショートショートを書き始める。(WOWOWの番組内容から引用)


 余命1年を宣告された妻を笑顔にするために、1日1編のショートショートを捧げ続けた作家の夫。SF作家・眉村卓さんと夫人の実話を基にした慈愛に満ちたドラマ。

 本作、139分と尺が長いんですが、中だるみもせず、かと言って、節子さんの病状についての描写が疎かになることもなく、しっかりとドラマの世界観に没入できる、よくこなれた脚本だと思いました。

 前半は、ほのぼのと笑えます。朔太郎の空想から生まれるショートショートの世界が、実に楽しく映像化されていて、とても癒されます。節子さんと一緒になって、笑って、免疫力を高められそうです。
 そして、節子さんは、本当に朔太郎がスキなんですね。もちろん、朔太郎も節子のためなら何でもやり遂げたい一心。互いに相手を思いやる、その真剣度が伝わってきて、ホントにステキな夫婦像だと感じます。草彅さんも竹内さんも、実に素晴らしい演技で、牧村夫妻の絆の深さをヒシヒシと感じさせてくれました。

 そのおかげで、後半、もうちょっとしたエピソードで、涙が溢れて止まりませんでした。
 愛してやまない人が亡くなる。その切なさと、亡くした人に対する深い愛情と感謝の念の表し方が、あぁ、そんなカンジだよな、放心して動けなくなっちゃうことも、あるんだろな、ってカンジで、ここでも草彅さんの抜群の表現力で、喪失感で憮然と佇む朔太郎を魅せてくれました。
 そして、亡くなったはずの節子さんの一言が聞こえちゃう。この脚本、最高です。悲しみに暮れるだけの愁嘆場になりそうなところを、ふいっとスイッチを切り替えて、朔太郎の心も、そして観客の心までも、じわっと温かい気持ちにさせてくれる、最高の魔法の一言。

 ともすれば、悲しいお話になりそうなのに、観終わった後、実にすがすがしい気持ちにさせてくれる、ステキな夫婦愛のドラマでした。


竹内結子さん、演技うまいし、こうして見ると、けっこう幅広いキャラ演じ分けてますね。
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 さて、本日の朝刊で、本作の原作者の作家・眉村卓さんが2019年11月3日、永眠されたとの報に触れました。享年85歳でした。
 中学生時代に読んだ〝まぼろしのペンフレンド〟以来、日本のSF作家で、ボクが唯一ハマッた作家さんでした。
 特に、ショートショートは第一人者の星新一さんのお作よりもお気に入りで、角川文庫からショートショート集が出るたびに、読み漁っていました。
 ボクの勝手なイメージですが、星さんのショートショートは、切れ味鋭いカラッとした感じの作風。眉村さんのショートショートは、優しさに包まれて人肌の温もりを感じるような作風。ショートショートなのに、なんか胸に残る温かみに軽い高揚感を覚え、次、また次、と続けざまに読みたくなる感じでした。
 大好きだった作家さんの訃報に触れ、胸が痛む朝でした。謹んでご冥福をお祈りいたします。

※繰り返し映像化される眉村卓さんの人気のジュブナイルたち
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●監督:星 護 ●脚本:半澤律子 ●原作:眉村卓(小説『日がわり一話』『日がわり一話 第2集』/出版芸術社、『妻に捧げた1778話』/新潮新書、『日課・一日3枚以上』/私家版)